・「“文学少女”と月花を孕(だ)く水妖(ウンディーネ)」野村美月/イラスト:竹岡美穂ファミ通文庫 の 2-6-6(エンターブレイン)2007-12-25
売り上げランキング : 2347
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
“文学少女”シリーズ6作目にして、特別編。夏休みにこんなことがあったとは…。
八十年前に起こった惨劇はまた繰り返されるのでしょうか?でも「繰り返す」って偶然にではなくてある程度仕込んでるんだものなぁ。それはなぁ…。
ただ今回のお話の元になったのは、姫倉光圀のキャラクターを考えると、麻貴先輩が言うように「なんの切り札にもならない」秘密のような気がします。
いや、普通ならそれなりに重大なことなんですが、文学少女の血塗られたポジションに配されると、さほど、ねぇ…。
あと、麻貴先輩がそんなに雨宮蛍を気にしているのはちょっと意外。縛られない魂(チェインレス・ソウル)こそ重要で、自分に応用できない例ならさっさと忘れてしまうように見えたのですが。
エピローグは、6作目してますが、ちょっと無理があるようにも…。
☆☆☆☆−(甘い、か?)
目次
プロローグ 麻貴 蛍の宵・姫の語れる
一章 さらったのは悪い人です
二章 本を読む巫女
三章 白雪あらわる
四章 姫の事情
五章 早すぎた客人・消えた恋人
六章 緋色の誓い
エピローグ 私は、きっと笑っています
恒例「彼女の味覚」を。
まずはアベ=プレヴォーの『マノン=レスコー』について
転落してゆく恋人達の物語のはずなのに、甘く熟れたイチジクに、舌がカァッと燃え上がるほど洋酒を振りかけて煮て、ビターなチョコレートアイスを添えていただく感じなのっ。イチジクのぐじゅぐじゅした果肉が舌にからみついて、目眩がするほど美味しいのよぉっ。
続いてトーマス=マンの『トニオ=クレーゲル』。
ずっしりと重いベイクドタイプのチーズケーキのように、酸味のきいた濃厚な味が、舌の上にざらりと広がり、ゆっくりとろけるの。レモンと洋酒の香りがほのかに漂って、哲学的だけど爽やかで、少しだけ飲み込むのが苦しくもあるのよ
そして、今回の本題である泉鏡花。
鏡花の描く物語は、まるで花で作ったお酒のようよ!可憐な野菊、神秘の月見草、あでやかな山梔子(くちなし)、凛然たる忍冬(すいかずら)、咲き誇る金木犀。
花々の香りに陶酔しながら、きらきら光る透明な液体を少しずつ味わううちに、足元がおぼつかなくなり、目眩がし、自分がどこに立っているのかすらわからなくなってしまう。舌に広がる、めくるめく百花繚乱に飲み込まれてゆくのよ
次は変り種で笹団子の味を想像して…。
まぁ、美味しい。まるで小林一茶の俳句みたいな味ねっ。笹の香りがふんわり上品で、餡も甘すぎず優しいの
鏡花の『外科室』は…。
まるで山梔子(くちなし)のお酒のように……言葉も物語も、透明で、儚くて……。
ほのかな花の香りがいつまでも口の中に残って、それがとても切なくて、同じ場面を何度も読み返してしまうのよ……
さらにフリードリヒ=フーケーの『ウンディーネ』については
まるで、干しぶどうがいっぱい入った、硬いライ麦パンを齧るように、素朴で、懐かしくて、少し苦(にが)しくて……愛(いと)おしくて……噛むほどにライ麦の酸味が増して、干しぶどうの自然な甘さと溶け合って、舌に切ない余韻を残すの……
実は今回の裏テーマはお酒なのじゃないか、と上の引用を見ていて思います。
で、極めつけ。心葉が流人から教えられた「元気が出る単語」は、遠子を歌い踊らます。証城寺の狸囃子とともに。
彼女を酔わせたのは"告白" "接吻" "抱擁"。
文学少女の少女らしいトコですね。






















