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* Bettty NOTE *
本やマンガから雑談に使える話を…

「転がる香港に苔は生えない」漂泊の思いやまず

転がる香港に苔は生えない (文春文庫)・「転がる香港に苔は生えない」星野博美
 文春文庫(文藝春秋)2006-10
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文庫で600頁超という厚みで買ってから積んでありましたが、読み始めるとまあまあスイスイと。誕生日が近い人はセンスも近くて読み易いんでしょうか。とはいえ自分に彼女ほどの行動力はありませんが。

内容は香港返還前後の空気を伝えるもの。32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作です。

1個70セントの卵は自分で選んでいいが、60セントのは選べない。安いものは悪いものという剥き出しの資本主義。中国からの密航者も多く家族が香港と中国と離れ離れになっていることも珍しくない。生い立ちも背景もまったく異なる人間がおしあいへしあい常にストレスにさらされるなか、頼るのは金と人脈。濃密な人間関係の裏側にある静粛恐怖症。博打(麻雀と競馬)好き。必要なのは茶餐庁(ちゃーつぁんてん)と、中国人が多くて交通が便利なこと。
細部はともかく、人が流れ込み活況を呈すところというと江戸や少し昔の東京と較べても面白いかもしれません。

英領香港の歴史(アヘン戦争の講和条約からは約百五十年)のなかで、ラストエピソードになる「返還」は香港に住む誰にとっても大き過ぎる出来事です。その歴史の重みや空気丸ごとを一冊で伝えることは不可能でしょう。
ですので、一個人の視点からある街の移り変わりを活写した労作と言うほうが内容に即しているかもしれません。細部に宿るものは読者が見つけてください。

政治の自由はなく経済の自由もそのうち減っていくとありましたが、
返還から十年、今も香港は転がりつづけているんでしょうか。
☆☆☆☆-

タイトルは「片雲の風にさそはれて」と前置きをつければ「奥の細道」。若い頃、誰しも外に出たいという気持ちにはなると思うのですが、そこですぐにエイっと出てしまった人はそのままどこにも根付かずに漂い続けるような気がします。逆にじっくり準備して、地元に親なり知人なり縁を残して出ようとする人は、そう簡単には動けないでしょうし、動いた先でも根を張るように思います。
著者に対しては前者のイメージがあるのですがどうでしょう?
たまらなくあの雑踏の中に戻りたくなるのは、根を張りかけた場所への郷愁なのではないでしょうか。

以下、目次(長いです)
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  1. 2007/10/11(木) 01:42:59|
  2. books & writing|
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